――恋は麻疹に似ている、歳月を重ねそれを患うと、
それだけ恋は重い病気になり得る。
誰の言葉だっただろう、筆をとめた浮竹の瞳は天井を仰いだ。
きっちりと正方形を描く天井の模様は見ているだけで気が滅入りそうになり、
浮竹はすぐに視線を外に向ける。
ザァーザァーとやむことを知らぬ雨、天から地へとそれが落ちる様は目まぐるしい。
鉄色の重々しい空に浮竹は眉を顰めた。
筆を置くと、浮竹はその場に寝転がる。
梅雨。
ばらばらと畳みの上に散らばった白髪が少しだけ湿り気を帯びて
クルクルと円を描いていた。
それは銀糸の刺繍のようでもあり、しかし無造作で規則性をなさず。
浮竹は雨の日に弱い。
というのも体の弱い浮竹は気候の変化に敏感であったからで、
特別な体質ではなかったが、人一倍の病弱さを兼ね備えた彼は
雨には敏感であった。頭を抑える仕草をみせるとゆっくり瞳を伏せ、
浮竹はため息をついた。
「色が、…」
色がない。
見渡せば木の茶色、壁の薄い緑、自分の肌の蒼白さ、
そこには浮竹の求める色は無い。
「恋患い…な」
からかい言葉だと思っていたよ。
自嘲気味つり上がった唇で誰に聞かせるでもなく呟くと少し間があって、
ため息のあとに名前を呼んだ。
「一護」
名前を呟くだけでなんとも言えない感情が湧き上がってくるなんて、
いよいよ重症だな、ある種の恐ろしささえ感じる。
「何だよ、浮竹さん」
ギクリ。
浮竹が目を開くと、目の前に求めていた色があった。
まるでパレットの上で作られたかのように鮮やかな色。
名前を呼ぶと現れるだなんて、まるで飼い猫のようだと少しだけ思った。
浮竹はその眩しさに目を細めると、一護はその場にしゃがみこんだ。
「いつから居たんだお前は…」
霊圧の消し方が上手くなったな。
手の届く範囲にきた一護の頬に、寝転がったまま手を伸ばすと浮竹は、
優しく目元を親指の腹で撫でた。
「…知るかよ。あんたなぁ、体調悪いならちゃんと寝てろって言ってんだろ」
恥ずかしげに質問を流すと、一護は浮竹に苦言を呈した。
顔を顰めた一護に浮竹は、目元をなぞる指の動きを止めて、
小さく笑うと「ああ」と頷き、
「ほどこしようがないな、」
呟くと喉の奥で再びククッと笑った。
本当は施しなんていらないのに。
それだけ恋は重い病気になり得る。
誰の言葉だっただろう、筆をとめた浮竹の瞳は天井を仰いだ。
きっちりと正方形を描く天井の模様は見ているだけで気が滅入りそうになり、
浮竹はすぐに視線を外に向ける。
ザァーザァーとやむことを知らぬ雨、天から地へとそれが落ちる様は目まぐるしい。
鉄色の重々しい空に浮竹は眉を顰めた。
筆を置くと、浮竹はその場に寝転がる。
梅雨。
ばらばらと畳みの上に散らばった白髪が少しだけ湿り気を帯びて
クルクルと円を描いていた。
それは銀糸の刺繍のようでもあり、しかし無造作で規則性をなさず。
浮竹は雨の日に弱い。
というのも体の弱い浮竹は気候の変化に敏感であったからで、
特別な体質ではなかったが、人一倍の病弱さを兼ね備えた彼は
雨には敏感であった。頭を抑える仕草をみせるとゆっくり瞳を伏せ、
浮竹はため息をついた。
「色が、…」
色がない。
見渡せば木の茶色、壁の薄い緑、自分の肌の蒼白さ、
そこには浮竹の求める色は無い。
「恋患い…な」
からかい言葉だと思っていたよ。
自嘲気味つり上がった唇で誰に聞かせるでもなく呟くと少し間があって、
ため息のあとに名前を呼んだ。
「一護」
名前を呟くだけでなんとも言えない感情が湧き上がってくるなんて、
いよいよ重症だな、ある種の恐ろしささえ感じる。
「何だよ、浮竹さん」
ギクリ。
浮竹が目を開くと、目の前に求めていた色があった。
まるでパレットの上で作られたかのように鮮やかな色。
名前を呼ぶと現れるだなんて、まるで飼い猫のようだと少しだけ思った。
浮竹はその眩しさに目を細めると、一護はその場にしゃがみこんだ。
「いつから居たんだお前は…」
霊圧の消し方が上手くなったな。
手の届く範囲にきた一護の頬に、寝転がったまま手を伸ばすと浮竹は、
優しく目元を親指の腹で撫でた。
「…知るかよ。あんたなぁ、体調悪いならちゃんと寝てろって言ってんだろ」
恥ずかしげに質問を流すと、一護は浮竹に苦言を呈した。
顔を顰めた一護に浮竹は、目元をなぞる指の動きを止めて、
小さく笑うと「ああ」と頷き、
「ほどこしようがないな、」
呟くと喉の奥で再びククッと笑った。
本当は施しなんていらないのに。
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